研究概要 |
みどり系,みず系及びみち系の副次的オープン・スペースを整えてゆく現代的戦略概念として次の項目を抽出した。(1)高密度空間で私的敷地の一部を公的空間として提供する仕組。このみち系の代表的事例が公開空地であり、みどり系では民有地に対する緑地保全協定書による保全活用を、みち系は溜池の所有者からの貸与による市民公園的利用をあげる。(2)機能複合化を促してオープン・スペース化を計る。その本来の機能からみて利用に制限があり、非遮弊、景観、時空間を限定した立入り、自由な立入りの4ランクを設定した。市街地の鎮守の杜、工場緑化敷地、臨港地区の水辺地、市街地の水道浄水施設などを取上げ、機能複合の可能性と障害を少なくする方策の検討を行った。(3)オープン・スペースの基幹性と副次性からみた各段階を整える。みず系では雨水流出抑制調整池、池水緑地、農業用水など人為施設のネットワークを想定したが、整備の体系性に弱点があり特に必要な都市中心部で活用の水準が低い。みどり系では「近郊緑地」から保護樹林までの序例が明確で、仕組の面で緑地保全協定や借地運用などで工夫すべき要件を示した。みち系では、ポケットパーク的利用からロード・パーク的事例まで副次性と複合性が各段階に及ぶ。(4)みどり、みず、みちは相互に関係づける。みちの視点からは「散歩道」は歩行道線としてのソフトなネットワーク化が主体である。逆にみずをオープン・スペースにおいて演出しているのはみずの脈絡を切り離した事例が多い。自然らしさのトータルな顔や地域の独自性で代表されるアメニティに欠ける事例が少なくない。(5)コミュニケーションの場として活用する事例研究を通して、副次的オープン・スペースのうち機能複合型では訪問型を指向し、小空間スケールの私有地活用型では常在型を指向しているが、維持管理や運用面の問題のためにコミュニケーション場としての活用が不十分である。
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