研究概要 |
本研究は関東平野南西部に位置する丹沢山塊の東端、大山と関東平野北部の赤城山で酸性化した霧水を採取し、その成分分析と酸性化機構を解明することを目的としている。今回この研究において新たに、高い酸性度の霧が関東平野南西部で頻繁に発生することが観測された。 試料の霧水は、大山阿夫利神社下社(標高700m)と赤城山山頂付近で採取した。試料の分析は電導度とpHのほか、主なイオン(Cl^-,NO^-_3,SO^<2->_4,Na^+,K^+,Ca^<2+>,Mg^<2+>,NH^+_4)について行った。 赤城山においては本年、天候の影響で採取予定期間に充分な霧水の採取ができなかったが、大山は梅雨の時期に頻繁に霧が発生し、多くの試料が得られた。分析の結果、1988年7月13日から7月29日まで連続採取して得られた大山の試料霧水計57個のpHは2.93から5.40に分布し、平均値は3.67という高い酸性度を示した。また、霧水中の酸と塩の総濃度はほとんどの試料で1mM以上であって、雨水のデータと比していずれの成分も平均して10倍以上高い値であった。これまで報告された赤城山等内陸部での霧水成分分析結果と比較すると、大山が相模湾から15kmの距離に位置してエアロゾル中の金属イオンによる緩衝作用が小さいためか、陽イオン中でプロトンの占める割合が大きい。硝酸濃度と硫酸濃度の相関を調べると、ほとんどの霧水試料は当量比でおよそ1対1の割合であり、硫酸濃度が硝酸濃度の当量比で3倍以上である雨水の場合と大きく異なり、強い酸性化にはNO_×xの影響が大きいことが示された。 この観測結果より関東平野全域での酸性霧の発生が予想され、頻繁に霧が発生する森林等での環境影響の早急の把握が必要であろう。さらに、霧の酸性化機構と酸性化に影響する要因は複雑であり、今後さらに解明されなければならない。
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