緑濃菌よりクローニングした六価クロム耐性遺伝子の塩基配列の決定が終了した。決定された配列の長さは3297bpである。この配列内に523bpの二つの完全な相同配列が見いだされたが、元のプラスシドとのハイブリダイゼーションの結果からクローニングの段階で同一配列が二重に組みこまれたものであることが分かった。約1.2kbのORF1は今のところ考えられる唯一の構造遺伝子コード枠のようであり弱いが幾つかの膜結合型ATPアーゼとの相同性がある。このことは緑膜菌の六価クロム耐性遺伝子の支配する防御機能は六価クロムに特異的な陰イオンポンプの可能性を示している。六価クロムを三価クロムに変換する細菌Enterobacter cloacal HO1株を分離した。この細菌は嫌気条件下でのみ三価クロムへの変換を行う。細胞レベルで見るとこの変換は電子供与体として酢酸のほかにグリセロール、エタノール、リンゴ酸などを利用できる。透過型電顕により細胞外に電子密度の高い沈澱物の存在が見られた。X線解析からこの沈澱物がもっぱら金属クロムを含むこと及び細胞内にはクロムの蓄積は特に認められないことが解った。この六価クロム変換機能は細胞内膜に局在している。この細菌より調製した膜小胞は適当な電子供与体の存在下で六価クロム変換活性を示す。アスユルビン酸-PMSが電子供与体とロリアンチマイシンA又はHOQNOによる阻害はこの場合みられない。蛍光物質を用いた膜電位測定から、膜小胞に六価クロムを加えると膜電位が形成されることもわかった。以上のことからE.cloacae HO1の六価クロム変換機能が細胞内膜の電子伝達系と係わっていることが強く示唆される。この六価クロム変換機能は嫌気条件下におけるE.cloacae HO1の耐性機構のひとつと考えられる。E.cloacae HO1は六価クロムを三価クロムに変換し、細胞外に水酸化クロムの沈澱を形成して系から取り除くばかりか、六価クロムを細胞内に蓄積することも少ないから理想的な六価クロム除去が可能。
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