研究の方法として、街路樹のある街路の一例について、実測とシミュレーションの両面から考究することにした。問題は、街路樹の葉冠の形態を如何にシミュレートするか、街路樹の日射に対する透過率がどの位になるか、である。 東西に走る幅員16メートルの一般車道の両側に、幅員3メートルの歩道があり、プラタナスの街路樹が約7メートル間隔で植えられている北側の歩道を対象とし、街路樹の樹高、葉冠の幅、下葉の地上高さ、等を1本ごとに測り、シミュレーションのための基礎資料とした。 プラタナスの葉冠の形態を簡易形態に近似させるには、半球と円錐とで表すのが妥当であるが、日射遮蔽の効果を計算するには、それでも複雑すぎるため、シミュレーションには葉冠を球に置きかえることとした。 街路樹の葉冠の日射遮蔽に基づく熱環境の調整効果を求めるために、歩道の中央を人が歩くことを想定し、その人に対する熱環境が、夏の日中の時間帯でどのように変わるかを、熱環境指標SET*を基に算定した。計算には、直達日射、照り返し日射のほか、気温、湿度、風速などが考慮された。その結果、街路樹のない場合は日中のSET*が38度Cに達するのに対して、街路樹がある場合は、その透過率を0.4としてもSET*が35度C程度であり、約3度Cの熱環境の調整効果があることがわかった。 このシミュレーションの成功によって、街路樹の熱環境調整効果の計測法の基礎が確立された。
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