ハマチ養殖場の物質循環循環数値モデルを作製し、宇和島湾の養殖場に適用してみた。ハマチの糞と残餌から成る有機炭素の沈降量の季節変化を現場のデータを用いて計算した。計算結果は現場のセディメントトラップ実験で得られた値を良く再現した。 この計算の結果海底に沈降する有機炭素のうち残餌の割合は約6割を占め、特にハマチの出荷前の10月から12月にかけて残餌による有機炭素沈降量は増大し、餌のやり方に問題のあることが示唆された。 現在この数値モデルを用いて愛媛県全域のハマチ養殖場の診断を行っている。すなわち全養殖場におけるハマチの養殖尾数は、投餌量、死亡量、出荷量データを収集し、必要な環境データもそろえて、各養殖場においてどの程度、糞や残餌の海底への沈降量があるかを明らかにする予定である。 養殖場の水質を決めている最も大きな要因は投餌量、養殖尾数であるが、自然要因の中では海水交換の大きさが最も大きな影響を及ぼす。宇和島湾の海水交換は夏季は急潮と呼ばれる外洋からの暖水侵入、冬季は吹送流によって担われていることが従来の現地観測の結果から明らかにされていたが、夏の急潮現象が四国南西海岸全体でどのように生じているかは明らかでなかった。 そこで1985年7月-1986年9月宇和島、下灘、宿毛、土佐清水の毎日の水温観測記録を収集し、急潮現象の実態を明らかにしようと試みた。その結果豊後水道南部に出現する暖水塊の各湾への侵入により急潮が引き起こされること、この暖水塊は夏季は水道北部まで侵入するが冬季は水道北部までは侵入しないこと、暖水塊の移動速度は約30cm/secであることなどが明らかになった。
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