本研究は、実際のガス化状態下においてフラックスの添加による灰分の融点降下とガス化炉操業温度の関係を明らかにし、新しいガス化プロセスを開発しようとするもので、本年度は以下の成果が得られた。 1.気流層型高温ガス化実験:前年度において試作した気流層型ガス化炉を使用して、粒径別に分けた3種類の太平洋炭(粒径44-53μm、105-149μm、420-590μm)のガス化実験を、ガス化温度:1300℃〜1650℃、石炭供給量:60〜500g/hの範囲で行った。出口の石炭転換率は0.5〜0.95となり、ガス化温度や粒径に大きく影響した。また、生成ガスは主にCO、CO_2およびH_2であり、CH_4などの炭化水素ガスはほとんど検出されなかった。SEMによりチャー表面を観察したところ、1400℃以上の温度でガス化したチャーには、チャー表面に溶融して丸くなった灰分が観察され、熱天秤による基礎実験で得られた結果と概ね一致した。 2.フラックスを添加した石炭灰分の溶融温度の推定:溶融温度が大きく異なる石炭灰分10種類に、石炭石、鉄鉱石などのフラックスを添加した時の溶融挙動を検討した。フラックスを添加した場合には、灰分中のAl_2O_3が溶融に大きな影響を与えることを明らかにした。また、これまでの実験結果に基づいて、灰分の溶融に及ぼす化学組成の影響を重回帰分析によりる解析し溶融温度の推定式を提出した。 3.混炭による融点制御:高融点炭に溶融温度の低い石炭を混合して灰分の溶融温度を調節できれば、フラックスの添加とともに実現性の高い融点制御方式になる。ここでは、基礎的な観点から混炭の溶融温度を測定した。その結果、溶融温度は灰分の含有量に比例してほぼ直線的に低下し、溶融温度の制御は融点の異なる石炭を混合することにより十分可能であること、また混炭の溶融温度を先の推算式で概ね推定できることを明らかにした。
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