本年度は、ケイ素を含むアルミノホスフェート)(SAPO-n)の合成と触媒特性に重点をおいて研究を行った。SAPO-11について最適の合成条件を検討するとともに、ケイ素の仕込量を変えて合成を行い、合成物中のケイ素量と仕込量との関係を求めた。また、合成物のNMR、(Al、Si、P)を測定し、焼成処理によりアルミニウムが骨格構造から離脱することを明らかにした。SAPO-11へのピリジン吸着により、SAPO-11はブレンステッド酸性を有することが分かった。また、アンモニアの昇温脱離スペクトルの結果からSAPO-11の酸強度はZSM-5よりも弱く、MAPO-5よりも強く、HYゼオライトと同程度であることが分かった。 SAPO-11を触媒として、エタノールの脱水反応およびメタノールの炭化水素への転化反応を行った。SAPO-11、SAPO-5はMAPO-n、MnPO-nにくらべて高い活性を示した。活性はHYとほぼ同程度であったが、HYの方が高い活性を与えた。アルミノホスフェートの骨格を2価金属で置換するよりも、4価のケイ素で置換する方が高酸性、高活性の触媒が得られることが明らかになった。 MAPO-nがメタノールからの炭化水素の合成に活性をもたないのに対し、SAPO-11は700Kで炭化水素収率77%を与えた。生成物は低級オレフィンが多く、芳香族炭化水素の多いZSM-5の場合と対照的である。生成物分布の違いは、両者の酸強度の違いを反映したもので、SAPO-11では水素移動反応が起こりにくいことを示している。活性はケイ素含量の増加とともに増大したが、生成炭化水素の分布はケイ素含有量により変化しなかった。
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