本研究はTrichodermaのセルラーゼとAspergillus aculeatusのセルラーゼ(アクセラーゼ)を混合使用すると強い相乗効果が現れることを出発点とし、両酵素剤による相乗効果について考察を加え、真に必要な酵素群を明らかにすること、ついで、これらの酵素の遺伝子のクローニングを行うとともに、これらの遺伝子を酵母に導入して、セルロースよりエタノールを生成する酵母の育種を計ることを目的として計画された。本年度の研究は下記の項目について検討した。 (I)アクセラーゼとメイセラーゼの相乗作用を解明するために、まず、両酵素剤に含まれる全セルラーゼ成分を均一に分取した。それぞれの酵素のセルロース分解に果す役割を検討した。その結果、幾つかのセルロース分解に重要な酵素成分明らかにした。 (II)セルラーゼ遺伝子のクローニングを行うにあたり、まず、膨潤セルロースの酵素分解に大きな役割をするFI CMセルラーゼを選んだ。本酵素の部分一次構造解析の結果を用い塩基プローブを合成し、これを用いcDNAバンクからコロニーハイブリダイゼーションにより、陽性クローンを得た。このものの塩基配列はBrCNペプチドのアミノ酸配列と完全に一致した。しかし、このcDNA断片は全長の構造遺伝子を含んでおらず、全長cDNAクローンの取得を行っている。上記で得たcDNAの断片を用い染色体DNAのフローリングを行った。その結果、cDNAをプローブとしたコロニーハイブリダイゼーションにより数個の陽性クローンが得られた。この塩基配列を決定した結果、94bpのイントロンを持つ769bpからなる構造遺伝子を含んでいると考えられた。構造遺伝子は223アミノ酸をコードしており、Metから始まる16アミノ酸からなるシグナルペプチドを持つと推定された。これは本酵素の分子量、アミノ酸組成と良く一致しており、決定した部分アミノ酸配列と完全に一致した。現在、この遺伝子の酵母に導入、発現を計画している。
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