水の熱化学分解法による水素製造を目的としたプロセスはこれまでに数多く提案されているが、なかでも"UT-3"は運転の連続化が容易であることから、工業的に重要なプロセスとして注目されており、その実用化に向けて基礎研究が盛んに進められている。しかしUT-3プロセスにおけるサイクル流体としての臭素〜臭化水素〜水三成分混合物の成分分離・濃縮ならびに熱回収操作に必須の平衡物性(気液平衡関係)に関しては、研究が立後れている。本研究は上記サイクル流体の気液平衡関係を、実用プラントで予想される操作範囲(圧力:常圧〜20気圧、温度:常温〜250℃)で実測・相関することを目的として着手したものであり、この目的を遂行するためにつぎの諸項を行なった。 1)金属腐食性に富む対象混合物を加圧、加温下で安全に取り扱うことのできる気液平衡測定装置について検討し、昭和62年度において考察したガラスとテフロンを主体とする測定機構を完成させるため、測定の中心部である平衡セルに改良を加えた。すなわち、平衡セル内に気液循環システムを組込み、気液接触の均一化と測定時間の短縮化を図った。 2)本測定装置を安全に運転するための圧力制御システムを検討し、マルチメータを介して高精度の圧力計とコンピュータとを連動させ、コンピュータコントロールによる測定の自動化を行なった。 3)気液平衡状態下の気相および液相組成を正確に測定する方法を検討し、イオンクロマトグラフによる測定精度をチェックした。 4)本気液平衡測定装置を用いて、上記三成分混合物の構成二成分系である臭化水素〜水系および臭素〜水系の蒸気圧を一連の液相組成について60〜150℃の範囲にわたって測定し、良好な全圧データを得た。現在本装置を用いて臭素〜臭化水素〜水三成分系の全圧データの測定を行なっている。
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