研究概要 |
本研究の目的は細胞接着性が期待されるオリゴペプチドArg-Gly-AspーX(X:Ser,Val,Alaなど)を高分子材料に固定化し、材料表面の構造を解析するとともに材料表面と細胞との相互作用をin vivo,in vitroで解明することにあり、得られた成果は次の通りである。 (1)オリゴペプチドの合成と固定化:X=Serの場合について、固相法ならびに液相法により合成を行った。前者では改良メリフィールド法を用い、反応の迅速化のため超音波を利用し優れた成果をあげた。後者に関しては合成のプロセスについて詳細な検討が加えられ、Arg-Gly-Asp-Ser(RGDS)およびスペーサーとしてGlyの三量体をつけたG-G-G-RGDSを収率よく合成する方法を確立し、大量の試料を調製した。得られたオリゴペプチドRGDSおよびG_3-RGDSはカルボジイミド法、あるいはpートルエンスルホニルクロリドを用いて、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレンービニルアルコール共重合体(EVA)、エチレンーアクリル酸共重合体(EAA)など高分子材料表面に固定化した。 (2)固定化材料の表面構造解析と蛋白質吸着:ESCA測定から材料表面での元素比O/C、N/Cを求め固定化を確認するとともに、PVA、PVA-RGDS、EAA、EAA-RGDS、EAA-G_3RGDSについて臨界表面張力を求め、オリゴペプチドを固定化することによって表面の親水性が増加することが明らかになった。さらに、これら固定化表面への蛋白質BSA、IgGの吸着挙動を詳細に検討した。 (3)固定化材料への細胞付着:PVAにHMDIで固定化した材料PVA-(CH_2)_<6ー>RGDSについて、マウス上皮由来繊維芽細胞(Lー細胞)の時間に対する付着実験を血清の不在下、存在下で観測し、5野間後の付着数が不在下で対比物の約10倍、存在下で約30倍になることを見出し、さらに画像処理装置により付着細胞形態の時間的変化についても検討した。
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