本研究の目的は、水晶発振子を基板としてラングミュアーブロジェット(LB)膜を累積し、累積時における振動数変化から、LB膜の累積比、累積時に水平から取り込まれる水分量、その蒸発速度などを求め、LB膜の配向性、累積時の条件などの知見を得ることにある。今年度の研究により以下のような成果が得られた。 1)9MHz、ATカットの水晶発振子を基板としてステアリン酸カドミニウム単分子膜を2-10層累積した。振動数変化から求めたLB膜の累積比は、従来のトラフ上のバーの動きから求めた値に比べて極めて正確であることがわかった。水晶発振子を基板に用いてLB膜の累積比を求める方法は、今後一般的な方法となることが予想される。 2)LB膜を水面から累積する時には、単分子膜とともにかなりの水が引き上げられることが発振子基板の振動数変化からわかった。引き上げられる水の量は累積速度や単分子膜の親水基に大きく依存し、ステアリルアルコール単分子膜を高速で引き上げる時には大量の水がLB膜層間にとり込まれることがわかった。 3)LB膜層間に取り込まれた水は空気中で徐々に蒸発していくことが振動数の経時変化から求められた。水の蒸発速度はLB膜の配向性に大きく依存し、よく配向されたLB膜が累積された時には蒸発速度は大変遅くなった。 4)以上の成果から、水晶発振子を基板に用いてLB膜を累積することにより、累積条件(水の取り込み)、膜の配向性などが累積時にわかることになり、LB膜キャラクタリゼーションの優れた手段になることが明らかになった。
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