薄膜形成プロセスの制御性改善が強く要求され、それに答えるものとして光誘起化学気相合成法が期待されている。本研究では、特に基板表面上の光反応に注目し、その機構を解明することを目的としている。具体的には、有機金属化合物であるジメチルアルミニウムハイドライドをシリコン基板表面に吸着させ、そこへArFエキシマレーザー(波長193nm)や重水素ランプからの紫外光を照射して、アルミニウム膜を形成させた。光照射のため、熱反応によりたい積可能な最低温度250℃より低温で膜が形成できるのみならず、膜の比抵抗は光照射により一桁以上改善されて、バルクアルミニウムの値に近くなった。膜のたい積が表面光反応であることは、使用したガス圧が1×10^<-4>Tovv以下と低いことが原因であるが、その確認としては、空間選択性(光照射部分の4に膜が形成)や、レーザーパルス周波数依存性(パルス一発当たりの膜厚増加分が周波数にほゞ逆比例)が観測された。そこで、基板表面に材料ガスが吸着されて光分解するとして、その数に対するレート方程式をたて、その解を調べた所、実験結果を全て説明できた。その際、光照射の効果としては、光分解に加えて光誘起だ脱離を考慮する必要があった。なお、この解析から、ジメチルアルミニウムハイドライドの200℃シリコン基板上での平均誘存時間が0.2秒であることが分かった。以上のように、薄膜形成過程が一部は定量的なレベルまで解明できたが、現在の所は現象論的なった議論であり、今後ミクロな立場から、さらに詳細な研究を続ける必要がある。
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