本研究代表者らは先に、アパタイトとウォラストナイトを含む結晶化ガラスが、生体内で骨と自然に強く結合し、しかも長期に亘って高い機械的強度を示すことを明らかにした。本研究は、その骨と結合する性質(生体活性)を支配する因子を明らかにすることを通して、具体的に新しい生体活性骨修復材料を設計することを目的とする。 上記結晶化ガラスと骨の結合機構に関しては、これ迄にi)上記結晶化ガラスを体内に埋入するとその表面に骨のアパタイトによく似たアパタイトの薄層が形成され、それが結晶化ガラスと骨の結合に決定的役割りを果たしていること、ii)そのアパタイト層の形成は、結晶化ガラスから溶出する何らかのイオンと周囲の体液の化学反応によって形成されることなど明らかにしてきた。 そこで、本年度の研究は、結晶化ガラスから溶出するどのイオンがアパタイト層の形成に重要な役割りを果たすかを明らかにすることを目的とする。そのため、ヒトの体液にほぼ等しい無機イオン濃度を有する水溶液の疑似体液に結晶ガラスから溶出する可能性のある各種イオンを単独で、あるいは組み合わせてできるだけ多量にあらかじめ溶解させておき、その中に種々の固体材料を7日間浸漬し、その表面にアパタイト層が形成されるか否かを薄膜X線解析法、FT-IR反射分光法、走査電子顕微鏡観察などを用いて調べた。 その結果、もとの擬似体液中ではアパタイト層を形成しない結晶化ガラスもCaやSi、P、Fなどを単独で添加した擬似体液中ではアパタイト層を形成しないが、CaとSiを同時に添加した液中では、アパタイト層を形成することが明らかになった。この結果は、結晶化ガラスからCaとSiが同時に溶出することが、その表面にアパタイト層を形成する上で重量であることを示している。
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