本研究は昭和63年度、1)リビング重合法による置換ポリアセチレンの構造の制御、特に分子量および分子量分布の規制、および2)生成ポリマーの膜特性(特にペーバーパレーション特性)、について検討した。以下に研究成果の要旨を述べる。 1.分子量および分子量分布の規制された置換ポリアセチレンの合成 種々の置換アセチレンの中で生成ポリマーが高い気体透過性など特異な性質を示す1-(トリメチルシリル)-1-プロピン(TMSP)をモノマーとして、長寿命成長種の生成の可能性を検討した結果、NbCl_5触媒、シクロヘキサン溶媒という特定の条件下でリビング重合が進行することを見いだした。即ち、この重合系におけるポリマーの数平均分子量(M^^ーn)は重合率に比例して増加し、分散比(M^^ーw/M^^ーn)は重合率に拘らず約1.2という小さい値を保ち、分子量分布がほぼ単分散であることが分った。モノマーと触媒の濃度比を変えることにより、分子量を1万〜20万の範囲で規制することが可能であった。 2.種々の置換ポリアセチレンの膜分離機能の開発 膜分離機能の中で、今年度はエタノール/水系のパーベーパレーション(透過気化)について検討した。多くの水選択透過膜(分離係数α<1)が知られているのに対し、エタノール選択透過膜としてはわずかにポリ(ジメチルシロキサン)などが知られているに過ぎない。本研究においてポリ(TMSP)が大きなαを示し、エタノール選択透過性であることを見いだした。置換ポリアセチレンの中でも、置換基の種類によってαが大きく変化することが明らかとなった。 次年度は、置換ポリアセチレンの設計と合成に関する研究の一環として、ヘテロ原子を含有する新規ポリマーの合成および機能を取扱う予定である。
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