研究概要 |
高極性基ならびに反応性基を持つ高強度の非架橋型イオン性熱可塑性エラストマーを得るため、ε-カプロラクトンを開環連合して得られた水酸基末端ポリエステル(数平均分子量850)からイソシアナート末端ポリエステルを得、ジメチルアミノメタノールを反応させることによって、ジメチルアミノ末端ポリエステル(AT-PCL)を合成した。水酸基末端ポリブタジエン(数平均分子量2700)から同様にして合成したジメチルアミノ末端ポリブタジエン(AT-PB)とAT-PCLを種々の配合で混合し、α,α'-ジクロロパラキシレン(DCX)を反応させて、ポリブタジエン-ポリエステルブロック型アイオネン(AD)を得た。試料のTHF溶液を窒素下60℃で1時間加熱後、THFを除去し、さらに100℃で2時間加熱してフィルムを得た。引張試験の結果、AT-PB/AT-PCL=25/75の混合比で作製したADは引張強さが38MPa、100%引張応力が35MPa、伸び148%に達する強靱なエラストマーであることが判明した。かかる挙動は、ポリブタジエン相より分離したポリエステル相の補強効果によることが動的粘弾性試験から判定された。一方、ジメチルアミノ末端液状ニトリルゴム(数平均分子量3700)とDCXならびに4,4'-ジピリジン(BP)を反応させて得られるアイオネンポリマー(NBPI)のフィルムは引張強度45MPa、100%引張応力4.2MPa、伸び410%の高強度、高伸長率を示す優れたエラストマーとなることがわかった。この高強度はBPの主鎖導入による補強効果によるもので、ウレタン構造を持たないジエン系アイオネンポリマーでも容易に高性能化し得ることが判明した。かかる高性能化発現の要素を分子設計の立場よりモデル的に検討を行い、取得エラストマーに対する導電性や分離機能性の付与を行うことが今後の計画である。
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