今年度はタングステン・ハロゲンランプを光源としたフーリェ変換分光器による測定可能範囲を役10000cm^<-1>まで拡大した。前年度に設置した長光路多重反射セルと組み合わせ、蒸気圧の低い分子あるいは吸収係数の小さな分子の近赤および中赤外スペクトルの測定が可能になった。また前記吸収セルは内容量が大きいので壁面との衝突で分解・重合する短寿命分子の有効寿命を伸ばすことができるようになった。前年度か引き続くアミンの熱分解生成物とその反応機構の研究として、N-ハロゲン(Cl)化したジプロパルギルアミンとジアリルアミンをとりあげた。赤外スペクトルの振動回転バンドの解析と分子軌道法計算とを組み合わせることにより前者の出発分子からはN-クロロパルギルイミン、後者からはN-クロロアリルイミンが生成することを確認し、振動バンドの帰属、構造異性体の同定に成功した。また、他の生成物の解析から、親分子の分解の仕方は環状遷移状態を経由する1.5解離であることを確定した。CH_2D_2分子の高励起状態を研究する準備として、従来まだ充分に解析の済んでいない、いくつかの基本振動帯の高分解スペクトルを解析した。1200〜950cm^<-1>領域のD_4、D_7バンドは相互にA軸まわりのコリオリカによって振動を受けていることがわかり、標準偏差0.004cm^<-1>でのあてはめに成功し、両振動レベルの精密な分子定数を決定した。その上にあるD_5、D_9のバンドについての解析が進行中である。^<15>NO_2のD_3バンドについても高分解スペクトルの解析が終了し、残りのD_1バンドと更にエネルギー的に高い所にある準位の分子定数を決定すべく、実験を続行中である。
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