金属酵素類似機能を有する反応性電極の開発を目的とし、ヘム蛋白モデルであるポルフィリン類、ビタミンB_<12>モデルであるコバロキシム類を修飾した電極の合成を試み、その研究結果を以下に示す。 1)基礎研究としてポルフィリン鉄錯体(TPP、OEP、今回新たに合成したメソジアリルエチオポルフィリン)及びコバロキシム類の酸化還元挙動をサイクリックボルタンメトリーにより測定を行なった。 2)キャスティング法による電極修飾:本法で作成した金属錯体含有ポリマーコーティング電極はいずれもポリマーの溶解、剥離、及びポルフィリンの溶解、低電導性等問題点が多く反応性電極への応用の可能性は少ないことが判明した。 3)低電導性の問題点を解消するため、ポルフィリン類の電解酸化重合法による電極表面の修飾を試みた。アニリン構造を有するポルフィリン及びその鉄、コバルト錯体を合成し約1.5V付近でアニリン部位を酸化重合することにより白金電極表面上に薄膜を形成した。この薄膜は電導性に優れているが、電解反応に用いた場合、電極からの剥離がおこった。 4)膜強度を高めるため、アニリン部位がポルフィリン環から離れ酸化重合を起こしやすいと考えられるポルフィリンを合成し、酸化重合を行なった。その結果、3)で形成した膜よりも強度が高く、白金電極上での薄膜化も容易に起こることが判明した。 5)電解重合法3)及び4)で調整した電解酸化重合被膜電極を用いて種々の化合物の酸化還元挙動をサイクリックボルタンメトリーを用いて測定した。その結果、被覆電極は白金電極に比べ、一般に電流値の低下がみられるが波形はそれほど変わらなかった。特にこの被覆電極でポルフィリン類のサイクリックボルタンメトリーを行なった場合には、逆に電流値の増大が観測できた。これは、電極表面上のポルフィリン膜とポルフィリンの相互作用のためであると考えられる。備品で購入した膜厚計で被覆膜厚を測定した。
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