研究課題
ライナックを用いた場合の陽電子発生部は、電子線のもつエネルギーを陽電子に変換する部分(コンバーター)と、発生した陽電子を減速する部分(モデレーター)とから成っている。陽電子発生法の中で、ライナックを用いる方法は、RIを用いる方法に比べ大量の陽電子を発生させることができる。これはライナックを用いることで、より高エネルギーの陽電子を生成できること、及びコンバーターから発生するγ線を使って、モデレーター部で再度対生成ができることに起因している。本研究の主な特徴は、陽電子の輸送に基本的に磁場を用いずに、電場で行なうことである。これまでにコンバーター、モデレーターから発生する高速陽電子の評価及びモデレーター、引出し電極の電位分布の評価を数値計算を用いて行なってきた。この結果を以下に示す。<コンバーター部>80〜100MeVの電子を入射させた時、コンバーター後端から発生する高速陽電子は、長さが13mm(放射長の3倍に相当)の時が最も多く、最高で入射電子数の16%であった。特に高エネルギー陽電子は、入射電子方向に対し30°以下に集中している。<モデレーター部>陽電子が透過するか、後方散乱されるかは入射陽電子のエネルギーに依存し、モデレーター部の中央部で有効に発生させるには、モデレーターの厚さを調整する必要がある。陽電子の再放出、あるいは後方散乱される陽電子のエネルギーの角度依存性は見られなかった。<引出し電極系>電極は基本的に同心状のパイプからなり、モデレーターの大きさ、あるいは実効的に陽電子が発生する領域の大きさに伴い最適な形状は異なるが、電極の直径と同程度のモデレーターから均一に陽電子が発生した場合、最適化によりビーム径が0.4倍程度のほぼ平行なビームが得られた。