研究概要 |
昨年度と今年度の科学研究費の助成を受けて完成した飛行時間型の電子衝撃イオン脱離装置(TOF,ESD)を完成させた。本装置を用いて当初計画した研究をおこなった。始めに、Mo単結晶上に吸着した一酸化炭素のTOF,ESDの実験においては分子状のイオンの検出に成功し、解離吸着した一酸化炭素のうち、物理吸着したものは室温でもTOF,ESDによって検出させるが化学吸着したものは試料温度の上昇と共に検出されないことが判った。また、チタン単結晶への酸素の吸着に関しては、清浄面への酸素吸着に先だって、分子状イオンの検出に成功した。吸着が進行するにつれて解離吸着した酸素イオンの強度が増大し、やがて飽和することが観察された。また、チタンの表面にステップや欠陥があれば、それに対応した酸素の吸着状態があることが判った。本装置の特徴は阻止電位法によってイオンのエネルギー分布が測定できるので検知されたイオンの脱離エネルギーが測定される。実際に測定すると分子のイオンで0.5eV弱、イオンが3-5eVの脱離エネルギーをもつことが判った。 従来の表面分析装置で検知ができなかった水素の検知にたいしても有力な手段であることが判り、特に、吸着した水からの水素イオンの検知は高感度で単原子層の0.1%程度の感度であることが判った。これにの成果を基にして、今後は脱離イオンの角度分布を示すESDIADパターンの観察と、試料を低温に冷却したときの各種吸着状態の研究を行うと更に有益な結果が得られることが期待される。実験結果による吸着モデルの提案と理論計算の結果かは現在のところ余り進展していないが今後、理論家の協力を得て進めなければならないと考えている。
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