研究概要 |
最近RHEEDの(0,0)回析電子ビーム強度が薄膜の層状エピタキシャル成長中では振動することから、層状成長の様子を調べる位相制御エピタキシーの方法が注目されている。この研究では、これをLEED装置を使って行うことを主目的としている。しかし、従来のLEED装置では試料結晶の正面に電子ビームを入射しなければならないので、蒸着中の(0,0)ビームの強度を観測するのは装置の配置上非常に難しい。そこで我々は、磁場を印加して電子ビームを曲げる磁場型LEED(MLEED)装置の製作を試みた。製作の要点は、磁場コイルの設計製作、電子銃の磁気シールド、および蛍光スクリーンの配置であった。MLEED装置は完成し、Si(111)の7x7、Si(100)の2x1パターンおよびSiC(0001)の6回対称の1x1パターンがそれぞれ得られた。これらの回折像観測における大きなメリットは、試料への一次電子の垂直入射にもかかわらず、試料の影が蛍光スクリーン上に全く現れないので常に(0,0)ビームスポットを観察できたことである。さらに〜50eV以下の低速電子での回折点輝度を高めるため、マイクロチャネルプレートを用いて回折像の明視化を行った。これにより7x7パターンではユニットメッシュ中における多数のエクストラスポットが鮮明に観察できた。これと並行して我々はRHEED装置を用いて位相制御エピタキシーの予備実験を行った。Si(100)2x1超構造表面へSiホモエピタキシーを行うと、基板加熱電流の方向により、(0,0)ビーム強度の振動モードが[110]入射方向で位相反転して観察できるなど新しい現象を見い出した。そこで、これらの現象をMLEED法を使って調べるため、現在はSi蒸着源をMLEED装置に装着し、Si上へのSiのホモエピタキシャル成長実験を試みている。
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