電気化学手法で作成された表面および修飾表面について、従来数多く研究されているUHV下での表面との対応を調べるために、LEED/AES/IRAS装置の設計・製作を行った。本装置を用いれば、清浄表面を作成したのちに高い圧力下でもin-situ分光測定が可能となる。装置は現在、組込み中である。本年度は主として電気化学の実験を行った。 1 白金(111)上の水素の吸着; 従来白金表面に吸着した水素の振動は1230-1250cm^<-1>のthree-holdサイトに吸着したものと、2000-2100cm^<-1>のon-topサイトに吸着したものが知られている。今回、白金(111)電極を用いて、この両サイトに吸着したPt-Hの赤外吸収を観測することに成功した。D_2O中でも対応したPt-Oの吸収が観測された。特に、on-topの吸収帯は、水素発生直前の電極電位で顕著に現われる。吸収帯の形と強度および波数は表面の作成方法に強く依存する。 2 白金(111)上のヒドロキノンの吸着; 平面分子が金属表面上に平行に吸着した場合、面内振動は表面選択率によりすべて観測不能となるはずであるが、金属と強く相互作用している分子に対しては、全対称振動に帰属それる赤外吸収がIRASで観測できる可能性がある。この場合、分子振動の方向は表面に平行であるが、遷移モーメントの方向は表面に垂直になっている。ヒドロキノンを希薄水溶液から白金(111)に吸着させると1550cm^<-1>付近に新しい吸収が現われる。この吸収帯は上記の様にVibronic-couplingにより説明することが可能である。 3 Pd(111)およびPd(100)上のCO; パラジウム単結晶電極表面に吸着したCOのIRASがUHV下で測定された結果と極めてよく対応することが見出された。即ち、(111)上ではthree-foldサイト、(100)上では、bridgeサイトが優先的に占有される。単結晶パラジウムに電着された銅はバルク銅と殆ど変わらない。
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