研究概要 |
今年度は、中深層水の硝酸態窒素(NO_3-N)の前駆物質を明らかにするため、高熱触媒酸化法による溶存全窒素(DTN)と見かけの酸素消費量(AOU)との関係、並びに溶存有機窒素(DON)の主成分のタンパク様物質の存在量及び分子量別定量を試みた。研究は、北太平洋180^°子午線、37^°N〜50^°Nの8点及び46^°40^'N,温162^°02'温Eの観測点において、6月より8月までの期間に採取した表面から最大水深4800mまでの海水試料を用いて行われた。 180^°子午線におけるNO_3-NとDTNの濃度は、6t=27.0の密度面において極大値をもつ。これらの平均濃度は39〜45及び42〜49μMの範囲でほぼ一定であるが、45^°以北において北に向って有意に増加した。AOUは傾向としてはNO_3-Nと同様に、北に向かって濃度増加が認められた。等密度水塊の濃度変化が生物過程によって生起したものと考えると、180^°ラインの45^°Nと50^°Nにおける6t=27.0面でのNO_3-Nの再成量は6.5μM、AOUの変化量は68μMである。しかし、DONの減少は0.5μMに過ぎない。DON減少量からはNO_3-N増加量を説明することができず、DONの前駆物質としての寄与率は小さいものと推定される。一方、分子量10^3以上の画分の溶存全アミノ酸量は、水深0〜4800mで90〜59onM、また、分子量10^4以上の画分は80〜260nMの変動を示した。いずれの画分も、水深100mで極大値を持ち、水深1000mにおいて最小値を示した。各分子量画分の相対的な鉛直変化傾向をみると、表層と100m深において、低分子画分(10^3-10^4)の占める割合が高く(56〜64%)、1000m深では低分子画分の占める割合は減少(32%)した。結合アミノ酸の存在状態は深度によって異なり、浅層においては低分子画分が、また、深層において高分子画分が増加する傾向が認められた。次年度以降は、粒状及び懸濁有機物の時空間変化に関する研究を行うことにより、窒素循環に果たす粒状物質の意義を明らかにしたい。
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