(1)昨年度報告した地球および月面上のクレータ分布密度に更に検討を加え新しい積算クレータ数標準曲線を提出した。これは地球・惑星形成初期のAT(accretional tail)は時定数〜10^7年を持つ集積とその余効と隕石衝突率が20億年周期のスパイク状増大PS(periodic swarm)を示す。一つのPSの継続時間は8億年程度で、一つのPSと次のPSの強さは1/(10)程度である。 (2)年代積算クレータ数の標準曲線を年代決定の方法とすることの有効性と原理的限界を明らかにした。クレータ数の標準曲線の特長は、40億年前、20億年前および最近数億年において1/(10)の段があることである。この段付き積算クレータ密度曲線を適用することは、ある地域の年代をPSの三つの磁気のどれかに振り分けることだけを意味し具体的年代数値を与えることは原理的にできない。特にクレータ数統計が信頼できる数に達する広い面積を有する地域以外にこれを適用することは意味がない。 段付き積算クレータ密度曲線が意味する隕石の周期的衝突と地球史上のいろいろな現象との間には、現象的相関があり、したがって因果的要因があったものと推定された。例えば地球や月の火成活動やテクトニクスが隕石衝突によって誘発される可能性を示唆した。 周期的な隕石衝突現象をもたらすメカニズムの検討を、可能な隕石リザーバに諸天体が及ぼす潮汐力の大きさ見積りによって行った。その結果、リザーバは太陽系内に存在し、そこからのリークをもたらす要因は太陽系外の巨大分子雲およびそれに潮汐力を及ぼすマゼラン雲であろうと想定した。単純な現象論的なシミュレーションを行うボックスモデルを提出した。
|