窒素、炭素、水素などの量と同位体比を使って大気の起源を明らかにするために、岩石試料中の窒素の量と同位体比を行なうためのシステムを製作し、隕石中の窒素の測定を行なうことが、本年度の目標であった。このシステムのハードウェアはすでに完成した。このシステムは岩石を加熱して窒素をN_2の分子にし、同時に出てくるH_2O、CO_2などの除去をする窒素精製装置と質量分析機から成る。四重極質量分析機が質量分析にスタティックに用いられている。これによって高感度でかつ、速く測定することができる。この分析機は質量の分解能が良くないので、窒素(質量数28、29で測定する)のピークに、一酸化炭素と炭化水素のピークがかぶってしまう。そこで我々は周辺のピーク26、30も測定することにより、一酸化炭素と炭化水素の補正を行なうことを考え、これに成功した。一方、窒素精製装置の方は、いかにしてサンプル以外から出る窒素の量を少なくするかが問題であったが、先日試験的に行なった測定ではほぼ満足のいく結果が得られている。これにより世界で最高のシステムにひけをとらない感度を持つシステムができ上がった。このシステムはごく最近完成したものなので、まだ発表できるデータは持っていない。来年度は種々の隕石、地球の試料の測定を行なう予定である。地球の試料としては、海底玄武岩、ダイアモンドなどを考えている。さらに現在、岩石試料中の炭素の測定を高感度で行なうことを考えている。同じ試料からの窒素、炭素を高感度で測定するシステムは、もし完成すれば世界初のものであり、揮発性元素の研究の発展に大いに貢献すると考えられる。微惑星中の揮発性元素の挙動については、コンピューター・シミュレーションで研究する。特に隕石のデータをもとにして、窒素の量と同位体比がどの様に変化するかを研究する予定である。
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