研究代表者はマウス皮フの二段階発がんモデルにおける発がん促進物質は極めて微量で細胞のアラキドン酸代謝を亢進させる作用があることを見いだしてきた。今年度はnon-TPA-typeの発がん促進物質としてokadaic acidおよびstaurosporineが発見されたので、これらの物質も従来の発がん促進物質と同様に極めて微量で細胞のアラキドン酸代謝を亢進させる作用があるかどうか検討した。 1.Okadaic acid(OA): ラット腹腔マクロファージをOAを含むmedium中で培養すると、10ng/ml以上の濃度でprostaglandin E_2産生が亢進されるが、その作用発現には数時間以上のtime lagが必要であることが明らかになった。アラキドン酸代謝亢進の強さは10ng/mlの濃度ではTPAと同等であるが、濃度を高くするとTPA以上に強力な作用が発現した。OAの誘導体である35-methyl OAは発がん促進作用があるが、細胞レベルでのアラキドン酸代謝亢進活性もOAと同等であった。発がん促進作用のないOA tetramethyl etherにはアラキドン酸代謝亢進活性はなかった。 2.Staurosporine(SS): SSは1および10ng/mlの濃度でアラキドン酸代謝亢進活性を示すが、100ng/mlの濃度ではTPAによるアラキドン酸代謝亢進を抑制することが判明した。SSは発がん促進物質でもあり、発がん促進抑制物質でもあるが、これらの作用はアラキドン酸代謝に対する二面性の作用と一致するものである。SSの誘導体のなかでK-252aはSSのようなアラキドン酸代謝亢進作用を示さず抑制作用のみを示すことから、K-252aは発がん促進抑制物質として期待できるものと思われる。 以上のようにOAもSSも従来の発がん促進物質と同様に極めて微量で細胞のアラキドン酸代謝を亢進させる作用があることが明らかになり、発がん促進作用とアラキドン酸代謝亢進作用との間に強い相関があることが示された。
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