これまでにPQQを高濃度に培養液中に生成蓄積するメタノール資化性細菌の単離とそれを用いるPQQの生産及びPQQの生成蓄積の機構の解析などについて検討を加えてきた。その結果、メタノール資化性細菌に高濃度に含まれるメタノール脱水酵素(MDH)が培養後期に培地中のメタノールの欠乏とともに不必要なタンパク質となってターンオーバーされてPQQが遊離し、培地中に蓄積すると考えられる結果が得られた。そこでMDHからPQQの解離に関係する要因を調べるためにメタノール資化性細菌からMDHの精製を行い、その性質について検討した。 Methylobacillus glycogenesよりMDHを均一に精製した。分子量13万で6万のサブユニットの2量体であった。1分子あたり2分子のPQQが含まれるほか、1分子あたり1原子のカルシウムを含むことが今回初めて明らかになった。MDHは本菌の可溶性画分の約7%をしめていた。MDHに含まれるカルシウムとアポタンパクとの結合は極めて強固で、金属キレート剤に対して透析するだけではカルシウムの含量は変らず酵素活性の低下もみられず、MDHは安定であった。しかし、6M尿素存在下で金属キレート剤に対して透析すると、カルシウム含量の低下ととももにMDH活性の低下が観察された。このような酵素に外からカルシウムを添加すると完全な酵素活性の回復がみられた。カルシウムを完全に除去してMDH活性を消失させたのち、再びカルシウムを保持させ、酵素活性を100%回復させる課題が今後に残されているものの、カルシウムがMDH活性と構造の維持に重要な役割を有することが確認された。
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