本研究ではAgrobacterium菌によるイネの形質転換を試みる。まず新しい菌を分離し、これらの持つTiプラスミドの性格づけを行なった。 秋田県に存在するクラウンゴールからAgrobacteriumを採取し、代表的なノパリン型株4種を得た。これらは6種の異なる植物に腫瘍を誘発し、広宿主城を持つことがわかった。次にT-DNAをクローニングし、制限酵素地図を作成した。オーキシン、サイトカイニン合成遺伝子を含む領域は3種の菌については保存され、1種については異なっていた。それ以外の領域については、特定の部位に菌に依存した長さの挿入が起こっていることが明らかとなった。これらAgrobacteriumのイネへの感染を試みる目的でベクター系を作成した。まず植物形質転換用バイナリーベクターpBI101の改変を行なった。相同組み換えによりイネ染色体への組み込み頻度を高くするという可能性を念頭に起き、イネ反復DNAであるSacIの1kb断片を上記ベクターにクローン化した。3者昆合実験により、このクローンとそれぞれのTiプラスミドを持つAgrobacteriumを作成した。一方、イネ(秋田コマチ)については、種子の胚からカルスを誘導した。これを液体培養にし、比較的小さな細胞塊が得られる迄継代した。細胞壁分解酵素処理によりプロトプラストを調整した。現在これから細胞への再生と植物体への再分化を試みている。今後プロトプラストへ上記のAgrobacteriumを感染させ、マーカーとなるカナマイシンおよびハイグロマイシン耐性による形質転換体の選択を試みる予定である。
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