日本産野生マウス由来の近交系MOAとヨーロッパ産由来とされるBALB/cを用いて、交配による銀染色(Ag-NORs)パターンへの影響及び遺伝子マッピング等の解析を行なった。 1.特定のリボソームDNA(rDNA)クラスターが仁形成に参与しない現象があることは有名であるが、その遺伝的支配システムはまったく解明されていない。その解明の端著として、Ag-NORパターンがN_2マウスでどのように変化するのかを調べた。MOAのAg-NORsは染色体12、15、16、17そして19に存在し、一方BALB/cは染色体12、15、16そして18に存在した。8匹のN_2[(MOA×BALB/c)×MOA〕の染色体構成はCバンド及び、rDNAの制限酵素断片長の多型を利用し推定した。rDNAの多型性領域(Vr)はBALB/cの場合、染色体毎に分化しており、既にマップされている。N_2のAg-NORのパターンは親のそれから期待されるものと大きな差異はなかった。したがって片親由来のrDNAクラスターがすべて不活化されてしまうようないわゆるNucleolar dominanceは観察されなかった。しかし、N_2雄一匹に於て、調べた細胞の50%でYに銀粒子がのるという異変も認められた。今後、rDNAのコピー数のさらなる増減を求めてバッククロスを重ね、それらの個体でAg-NORのパターンに変化が認められるか否かを検討していく予定である。 2.上記のN_2マウスを用いて、polymorphic repeatitive sequence(PR1)ファミリー、B(EcoRI:3.5Kb)、C(2.3Kb)、D(1.5Kb)そしてE(1.4Kb)の染色体マッピングを行なった。その結果、PR1-BはBALB/cのどのVrとも対応せず、PR1-Eは染色体18に分布し、他は複数個の染色体上に分散分布すると推察された。PR1-Bはin situ hybridizationの結果、染色体19の動原体近くに位置することが判明した。今後、野生マウスの染色体4、8、9、10、11、17のAg-NORsを導入し、マーカーを増やす予定である。
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