1.マウスrRNAの転写開始因子。マウスFM3A細胞を定常期(1〜2×16^6細胞/ml)まで培養し、それから調製したS100によるin vitro rDNA転写効率は、対数増殖期(5×10^5/ml)に比べ、8%程度にまで低下する。NAD^+をin vitro rDNA転写系に添加すると、定常期S100による転写効率が、NAD^+の濃度依存的に著しく上昇し、対数増殖期S100によるrDNA転写と同程度にまで回復した。このNAD^+の効果は、30℃、20-30分間の前処理が必要であり、チミジンおよびニコチンアミドにより阻害された。NTPの濃度変化のrDNA転写に対して、NAD^℃は何ら影響を及ぼさないことから、単にNTPの安定化によるものではなく、転写因子またはRNAポリメラーゼIがポリまたはモノADPリボシル化の修飾を受け、rDNAの転写効率に影響を与えたことが示唆された。目下、何がADP-リボシル化を受けたためによる影響かを検討中である。2.プロセッシングシグナルと因子。マウスrRNAの転写スペーサー部分数ヵ所のエンド型切断部位近傍に、GGYUUGYCY=UorC)なる共通塩基配列があることを昨年報告した。この共通塩基配列を含む21merの合成ヌクレオチドTCGACCCCCGGTTTGTCCCCTを合成し、SP6プロモーターのRNA合成開始点26塩基下流に連結したプラスミドを構築した。50塩基長のrun-offRNAを合成し、マウスS100を用いて切断を受けるか否かを調べたところ、37および13塩基長のRNAが生じた。この結果は、上記共通塩基配列内で、エンド型切断が生じたこを物語るものであり、この配列がプロセッシングシグナルに関与する可能性を示唆した。また、この部位の切断に関与する蛋白性因子は、リン酸セルロースカラムでは0.1MKCL溶出分画に認められたが、ヘパリン-セファロースカラムでは、0.1Mおよび0.6MKCL溶出分画の2つの分画に分かれることが明らかとなった。
|