研究概要 |
遺伝子の発現機構の大部分は転写レベルで制御されている。金属による誘導機構を明らかにする目的でメタロチオネイン(MT)遺伝子を用いて検討を行った。高等動物としてヒトを、下等生物として酵母を材料とした。また進化についても考慮するため、中間に位置する線虫についても検討を加えた。線虫については遺伝子の解析が全くなされていないため、まずcDNAの単離を試みた。カドミウム曝露線虫よりmRVAを抽出し、cDNAライブラリーを作製した。すでに明らかにしている部分アミノ酸配列よりオリゴヌクレオチドを合成しプローブとした。その結果得られたMT-I及びIIのcDNAクローンについて配列を調べたところ、従来から知られている高等動物の配列とはかなり異なっており進化の面から興味深い結果が得られた。現在これらcDNAクローンを用いてMTgenomicクローンを検索中であり、得られ次第プロモーターの解析をする予定である。ヒトMTIIAのプロモーター上にはmetal responsie element(MRE)が存在することをすでに明らかにしているが、この部位に結合する転写因子を検討した。MREを含む合成オリゴヌクレオチドを用いフゲルシフト法を行うと結合タンパク質の存在が示された。しかしこの因子はMRE特異的というようりも、Cに富む配列に親和性を有する可能性があり、SP1、AP2等の詳細な比較が必要と思われる。酵母MTは銅のみによって誘導されるという特長を有している。ゲルシフト法により、酵母MTプロモーター上のMREに特異的に結合するタンパク質の存在を明らかにした。このタンパク質は銅の有無にかかわらず結合活性を有し、銅感受性株にも存在が確認された。すなわちこの転写因子の結合ドメインに銅は必須でなく、転写活性化ドメインに寄与していると推定される。部分精製の結果分子量は32,000と考えられ、このタンパク質の完全精製、クローン化を現在すすめている。
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