哺乳類の神経系で特異的に発現する遺伝子の発現調節機構を解明する第一歩として、組織特異性をmimicできる無細胞転写系の確立を試みた。マウス全脳より核抽出液を得、マウス・ミエリン塩基性蛋白質(MBP)遺伝子を転写させたところ、肝やHeLa細胞抽出液に比べ、優先的に転写が起る事が明らかにされた。MBPプロモーターのCisエレメントの一つであるMBTE配列は、やはりこの転写系においても重要な役割を果した。MBPプロモーターの-53〜+60の領域にも、組織特異性に関与する配列が含まれていた。 中枢神経系親和性のヒトJCウイルスも、組織特異的転写を研究するモデルとして用いた。ウスルスの初期遺伝子は、マウス脳由来の核抽出液で、優先的に転写された。種々の転写実験、及びDNA結合因子の解析より、ウイルスエンハンサー領域には、ウイルス遺伝子の転写を調節するモチーフが3個存在し、2つは正に他の一つは負に(サイレンサー)働いていた。サイレンサーは異種プロモーターに対しても効果を発揮し、しかも脳抽出液中で優先的に働いていた。
|