1.葉緑体の光化学系I(PSI)Fe-Sセンサーの機能に関し、NADP・光還元能力を失った3種のPSI粒子を用いて分光学的及びメチルビオローゲン(MV)に対する反応性に関する研究を行った:1)HgCl_2処理により、センターBが選択的に破壊されたもの、2)好気的光失活処理により3種のセンターが部分的に破壊されたもの、3)嫌気的光失活させたもの。室温におけるμ秒領域の分光測定から、HgCl_2処理によりセンターBを失ったPSI粒子でもセンターAは対照と量的にも時間的にも同程度に還元・酸化されることを見いだした。この粒子のMV光還元活性は対照の60%程度に低下していた。以上の事実からMVへの主要な電子供与部位はセンターBであるが、センターAも補完し得ると結論した。嫌気的光失活粒子は反応中心P700が完全に残っているにもかかわらず、分光学的測定からFe-Sセンターへの電子伝達は起こらないこと、従って光阻害はAφ、A_1とセンターXの間に起こっていると結論した。好気的光失活処理粒子は、分光的特性、MV還元において、前2者の中間の性質を示した。Fe-SセンターA、Bは9kDaペプチドに結合しており、ペプチドのアミノ酸配列も明らかにされたが、各センターがどのcys残基に結合しているかは判っていない。HgCl┣D22によりセンターBが選択的に破壊し、SH修飾試薬によってまずセンターBに結合したcys残基を修飾し、次いで完全変性の後センターAに結合したものを別の試薬により修飾する。この方針に従って、各センターに結合したcys残基の同定を試みている。 2.緑色光合成細菌Chlorobiumの反応中心は緑色植物のPSI反応中心と相同性が高いといわれる。Fe-Sセンターを結合しているタンパク質を同定する目的で、蛍光性SH試薬を用いてcys残基を修飾したところ、低分子側にそのようなペプチドが存在することを発見した。
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