横細管は哺乳類心筋細胞を特徴ずける構造であり、以前Wistarラット心筋細胞での横細管の生後発達について報告した。今回哺乳類心筋細胞の肥大における超微形態的構造変化の解明を目的とし自然高血圧発症ラット(SHR)心筋細胞横細管を超高圧電顕を用いて立体的に観察した。 材料と方法:生後2から30週令(体重25ー398g)の雄SHR心臓を潅流固定し、Franzini-ArmstrongとPeacheyによる電顕用ゴルジ変法で左心室側壁心筋細胞横細管を選択的に染色。1から8umの厚切切片を作製し日立超高圧電顕H1250ーMで1000kvの電圧下で観察、±8の傾斜角度でステレオ写真を作製し立体的に観察した。対照として同週令のWistar Kvotoラッサ(体重27ー410g)を用いた。血圧はtail.cuff法で測定しSHRは7週令以降次第に上昇し15週令で180mmHgに達し、wKYは20週令でも140mmHg以下であった。(P<0.05)。 結果と考察:SHR横細管は生後17日(32g)から観察された。横細管は横走管、縦走管、扁平槽状部分からなり、各成分は成長と共にwKYと同じ横造的変化を示し、とくにSHRで縦走管の著明な増加が観察された。しかし、各発達段階において細胞間の横細管の構造的多様性はSHRでより顕著であり、管状部分に直径大小不同、走行不規則性、複雑な分枝による迷路構造(labvrinth)と盲端となった多数の短分枝構造が多くの細胞で観察された。迷路構造の初期構造は5週令で既に認められ、また5週令以降でも多数の扁平槽状部分の残存を示す細胞が観察された。SHR横細管の分岐、扁平槽状部図の残存は筋小胞体との接触面積の増加に関与し、また肥大心筋細胞の発達に際し細胞膜産生のreservoirとしての機能が推測された。不規則な走行は筋線維束の走行の不規則性を反映すると考えられた。以上の所見はSHR発達の初期から観察され、SHR心筋細胞の遺伝的な心筋症的性格の存在の可能性を示唆された。
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