研究課題
昭和63年度は、コミュニケーション障害児者の社会適応上の問題点を明らかにすることを目的とし、吃音者、聴覚障害児者を対象とし、質問紙によって調査を行なった。1.吃音者の社会適応に関する研究吃音の問題は単なる流暢性の障害として捉えるベきではなくて、その障害を持った「人間」の問題として把握すべきである。このような観点に立ち、吃音者の社会適応、特に聴場適応の実体を調査した結果、以下の結果を得た。つまり、(1)吃音者は必ずしもスピーチをとくに必要としない職業についているとは限らず、学校の教師・職員、セールスマン、医師、看護婦などいろいろな職業についていることが明らかとなった。(2)職業選択にあたっての貴重な提言が、先輩の吃音者から後輩の吃音者に対してなされた。(3)仕事をする上で吃音者がどのようなことに困っているかが具体的に明らかにされた。(4)吃音者が吃音のために仕事の遂行がうまくいかなくなったとき、それをどのようにしのいできたかが、具体的に明らかにされた。聴覚障害者の手話能力と孤独感本研究では、人間関係の確立や集団への適応を阻害する大きな要因となっている孤独感と手話でのコミュニケーション能力の不足がどのように影響しあっているかを明らかにすることを目的とした。その結果、コミュニケーション能力と孤独感の間には密接な関係があることが明らかとなり、聴覚障害者は手話や日本語でのコミュニケーション能力が低ければ低いほど孤独感を強く感じていることがわかった。以上2つの研究と平行して、聴覚障害児の社会適応における教育的課題をさぐるための研究、精神薄弱児の普通学級における適応とその規定要因に関する研究、等が行なわれ、現在も継続して進行中である。
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