本研究では従来から気相反応の分野では精度の高い動力学的研究にしばしば利用される衝撃波管装置を用い拡散燃焼過程中のすすの酸化に可能な限り近い条件の下ですすの酸化速度を精度良く観測し、すすの性状とその酸化速度の関係を解明することを目的としており、そのためにすす発生用の拡散燃焼バーナと衝撃波管を結合してバーナから排出される燃焼ガスにすすが浮遊したままの状態で衝撃波管に導入される。この方法は本研究の基礎となるアセチレンを燃料とした研究で開発されたものであり、本研究の最大の特徴であるが、これを工業上重要な飽和炭化水素燃料に適応するためには幾つかの問題がある。そこで本年度は(1)衝撃波管の初期圧力条件で作動し、かつ、飽和炭化水素の拡散燃焼過程中の後半な段階に対応するすすを発生し得るバーナを製作し、その作動条件と衝撃波管内に導入されるすすの性状の関係を明らかにすること、および、(2)すす酸化速度測定法の確立に重点をおき、酸化速度の測定を行うことを主な目的として研究を進めた。その結果、バーナの製作に関してはほぼ満足できるバーナが開発され、燃料および酸素の流量とそれぞれの予熱温度の制御により、比較的低温で燃料が重合した重質油から高温での炭化が進んだすすまで再現性良く生成し、衝撃波管に導入することが可能になった。また、測定法に関しては上記の広範な性状の『すす』の光学的性質の検討を中心に行った。これらの成果については総括班主催のシンポジウムで報告し、学会での発表は現在準備中である。なお、予算の執行に当たっては、バーナ製作のための外注工作費を『その他』に計上したが試作が成功であったのでこれを消耗品費に転じて自作した。また、広範な性状のすすを再現性良く発生させるための燃焼管理の必要上、備品の購入品目を変更し、パーソナルコンピュータを購入した。
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