低圧気相中で燃焼反応の素過程に対する磁場効果を研究する目的で、交差原子・分子線磁場効果測定装置を製作した。本装置においては、反応容器を電磁石(最大磁場13kG)中に固定し、真空ポンプで排気して2ケ所から気体試料を導入する。各々の気体は予めマイクロ波放電で活性化することができ、イオン種を、グリッドで除去した後、反応容器に導入して低圧(mTorr程度)で反応させる。反応の進行状況は、反応中間体による化学発光の検出やエキシマーレーザー励起パルス色素レーザーを用いたレーザー誘起蛍光(LIF)で測定する。 上記の装置を用いて、大気圧下の火炎中で我々が以前検出したOHのA^2Σ^+→X^2Π(0-0)発光に対する磁場効果の機構を研究した。まず、酸素(分速2cc)と水素(分速40cc)を別々に放電して、反応容器内で反応させると、次の反応でOHのA→X発光が出現した。 O_2+マイクロ波→2O(2^3P) H_2+マイクロ波→2H(1^2S) O(2^3P)+H(1^2S)→OH(A^2Σ^+) しかし、A→X(0-0)発光の強度には磁場による変化が観測されなかった。 次に、酸素(分速60cc)と水素(分速50cc)の混合気体をマイクロ波放電してOHのX^2Π状態を生成し、色素レーザーの2倍波でX→A(0-0)帯を励起し、A→X(0-1)発光を測定した。その結果、LIFの励起スペクトルのすべての回転線の強度が磁場により増大した。エタロンを用いて励起レーザー光の分解能を0.08cm^<-1>に高めてR_13とR_<21>3発光の磁場効果を測定したが、同程度の磁場増大を観測し、大気圧下の火炎で検出されたF_1準位とF_2準位との差異は認められなかった。OHでの磁場効果の機構を更に研究する予定である。
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