先に提案した分子の結合局在化分子軌道間の重なり積分を用いて分子間ポテンシャルを表すポテンシャル関数を発展させて、大きな分子のポテンシャル関数を作る方法を研究した。 分子性固体として興味ある分子の多くはかなり大きな分子であり、従来のように非経験的分子軌道計算によって分子間相互作用エネルギーを計算してから分子間ポテンシャル関数を作る方法では計算機時間がかかりすぎて現実的ではない。本研究では分子間ポテンシャルを構成分子の結合-結合相互作用の和として表現することにより、基本となる小さな分子で結合-結合相互作用ポテンシャルを決めておき、これらを使って任意の分子の分子間ポテンシャルを構成する新しい方法を作った。 標準分子としては、水、アンモニア、エタン、メタノールを選び、これらの分子対の非経験的分子軌道法計算によって得られる分子間相互作用エネルギーを再現するようなO-H、N-H、C-H、C-C、C-Oと酸素の非結合電子対間の結合-結合ポテンシャルを決定した。標準分子間の体ポテンシャルはH_2O…H_2O、NH_3…NH_3、C_2H_6…C_2H_6、H_2O…NH_3、H_2O…C_2H_6などすべての組合せにおいて、非経験的分子軌道法の相互作用エネルギーを非常に良い精度で再現し、最大誤差はいづれも0.5kcal/mol以内であった。 基本となる結合-結合ポテンシャルを用いて任意の分子の分子間ポテンシャルがどの程度の精度で再現されるかをテストするために、H_2O…エタノール、H_2O…t-ブタノールの分子間ポテンシャルを作り、非経験的分子軌道法のエネルギーと比較したところ、誤差は最大で0.7kcal/molとなり、十分な精度を持つことが確認できた。 結合-結合ポテンシャルは、有用な方法であることが明らかになったので、今後共役系分子への拡張を含めてさらに汎用な方法に発展させる。
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