宇宙初期の時空構造を決定する重力理論は一般相対性理論のラグランジアンに時空の曲率の高次項を付け加えた理論になっている可能性がる。このような理論では、非線型性が大きくなったとき一般相対論との差異が顕著に現れる。この点を明らかにするために、本年度は、非線型効果が大きくなる時期の宇宙モデルが、一般相対論でどのように記述されるかを研究した。 宇宙の大域的一様性はスカラー場等によって引き起こされるインフレーションによって説明される。そこで、どこまで一般的な初期条件に対してインフレーションが実現するかが重要な問題となる。 一様等方な時空にスカラー場が結合した系では、結合がミニマルならば一般的にインフレーションが起こり、結合がコンフォーマルならばインフレーションは起こらないことが明らかになった。 時空の初期特異点付近では非等方な宇宙モデルが一般性を持つ。そこで閉じた非等方宇宙を記述するビアンIXモデルを考え、また、簡単のためスカラー場の代わりに宇宙定数のある系を考える。この系において様々な初期条件に対するインフレーションの実現性を調べた。 この系は初期特異点付近で非線型振動を見せ、この振舞は離散的写像で記述できることがわかっている。この写像には2次元のカオス的な写像が埋め込まれており、これによって各々の初期条件に対応する位相空間内の軌道は混合される。この混合性により、十分時刻が経過した後には宇宙がどれだけ膨張したか不測することが不可能になり、これは、インフレーションの実現が、古典的にも確立性を持つことを意味する。 本年度明らかにされた一般相対論でのこの性質が、ラブロック理論でどうなるかが次年度の課題である。
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