Mg(Cu┣D21-xAl┣D2x┫D2)┣D22┫D2、x=0.5の付近の合金はラーフェス相構造であり、積層構造の異なった多くのポリタイプが見出されている。電子顕微鏡で詳しくその組識を調べてゆくと、積層順序の不規則な、かなり広い領域にしばしばでくわす。高分解能電子顕微鏡を使って、その積層順序を調べると、いわゆる不規則構造とはかなり異なっていることが分かった。この構造が準結晶の特徴を持つかどうかの検討を行った。積層構造における準結晶の可能性の一つとして、隣りあった層のあいだの位相の変化が、フィボナッチ数列で決められる構造が考えられる。1で始まる、1と-1とで出来るフィボナッチ数列を1597項作り、この数列に対応して位相が変化する積層構造を計算機に作らせた。この構造中に存在する二層間の相関をグラフに描くと、きれいな二次元の周期構造が現れると同時に、計算で求めたその構造因子には、はっきりとした自己相似性が存在することがわかった。一方、+1と-1とで出来る数列において常に、次のような相関を持つことがわかった。『1と-1でできる任意の数列において、mだけ離れた二つの要素による対のうち、この二つの要素の間にあるm-1個の要素の総和が、ある数に等しいものにだけ注目する。その様な対の中で、前の要素が1であり、後の要素が、-1の対と、前の要素が-1で、後の要素が1の対は、必ず交互に出現する。』この定理をフィボナッチ数列に当てはめて、対の出現の様子を調べた。これらの性質を実際の構造と比較した。電子顕微鏡で得た上記の合金の実際の積層構造において、そこから求められる二層間の相関のグラフの二次元的周期性、構造因子、回析図形における自己相似性、1と-1のフィボナッチ数列の持つ特徴、等が、上に述べた積層構造の準結晶特有が示すであろう顕著な性質を、はっきりと示していると、結論し難いと言わねばならない。
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