準結晶中の電子励起状態の性質を研究する目的で、AlAs/GaAsの超格子のバリアー幅をフィボナッチ数列に配置したフィボナッチ超格子を用いてその光学的性質を調べた。特に、強いレーザー光を用いた非線型分光法に着目しフィボナッチ超格子系への応用を検討した。 (1) 反射型偏光分光法の検討:研究代表者によって開発された反射型偏光分光法をフィボナッチ超格子の系に応用するとどの様な情報が得られるかを検討した。その結果、偏光分光信号は、その面積強度が電子励起状態の状態密度に比例し、線幅がその準位の緩和時間の逆数に比例することが期待できることが明らかになった。後者は準結晶中の電子の局在非局在の情報を直接反映するものであり、準結晶に特有な物性を引き出す上が重要であると考えられる。 (2) 波長可変色素レーザーの開発:(1)の実験を行うためには単色性の良い波長可変レーザーが必要である。そこで、エキシマーレーザーを励起源とする+1秒色素レーザーを製作した。特に線幅を狭くするために、キャビティー内にダブルプリズムエキスパンダーを入れた。その結果、線幅、強度共に充分な性能を有する光源を得ることができた。 (3) ルミネッセンスの励起スペクトル:上記のの光源を用いて、励起子発光を調べた所、フィボナッチ超格子からの発光とフィナボナッチ超格子に隣接した広い井戸からの発光を観測した。広い井戸からの発光をモニターし、レーザー光の波長をフィボナッチ超格子の励起子準位近傍に合わせ、レーザー光の波長の関数としてルミネッセンス強度を測定した。このスペクトルは、励起子準位の状態密度と伝播特性を反映したものとなるが、温度依存性の測定にその傾向が確認された。 (4) 予定:(3)の結果を正しく理解する為には(1)の方法により状態密度と緩和を分離することが必要であり現在準備を進めている。
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