目的:高温超伝導体YBa_2Cu_3O_7-xは、低温では超伝導性を持つ斜方晶(o)、高温では超伝導性をもない正方晶(t)構造である。相変態界面の構造は、斜方晶/正方晶(o-t)変態の構造を知るうえで重要である。そこで高分解能電子顕微鏡法を用いて相変態過程のその場観察を行なった。 方法:YBa_2Cu_3O_7-X焼結体より、イオンミリングにより電顕試料を作成した。この試料を雰囲気試料室(本年度購入)を備えた電子顕微鏡中で加熱し斜方晶/正方晶変態を起こさせ、その過程を高分解能電子顕微鏡法を用いてその場観察した。 結果:試料は、常温では多数の双晶構造を持つ斜方晶であった。試料を加熱すると、250℃付近から双晶が消失しはじめ、約300℃で全体が正方晶になった。冷却過程では、250℃付近から双晶の再成長が観察され、約200℃で全体が斜方晶なった。斜方晶・正方晶界面において、不連続な界面や転位などの欠陥が観察されなかった。このことより、この2相は完全に整合な相界面を形成していることが推測される。また、変態温度は加熱冷却を繰り返すと、低下する傾向が見られた。 また、高分解能電子顕微鏡観察結果から、格子定数a/bの変化を斜方晶/正方晶界面の両側における(100)面と(010)面格子縞間の角度θの変化より求めたところ、斜方晶相と正方晶相の界面を横切る部分で、a/b値は急激な変化を示さず、約50nmの幅をもって緩やかに減少していることが分かった。このYBa_2Cu_3O_7-xの斜方晶/正方晶間の相界面の高分解能電子顕微鏡観察結果をBaTio_3中の立方晶相と正方晶相間の相界面について提唱されたモデルと比較して考察した。
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