酸化物高温超伝導体YBa_2Cu_3Oy(YBCO)は、典型的な不定比化合物でありyの値には6からほぼ7まで変化する。本研究では、yの値の制御及びCuの位置にFeCoなどの3d遷移金属を置換して、超伝導機構を鮮明することを目的として、次のような実験を行い次のような研究実績をえた。 (1)YBCOにおける酸素量の制御と物性 YBCOにおいて、酸素量の制御は雰囲気の酸素分圧及び温度によって行うのが常道である。YBCOには、他に酸素空格子点に起因する規則-不規則転移が存在し、なるべく化学手衡的に低温で合成しなければならない。我々は、この2つを同時に満足させる方法として、酸素を充分含んだ試料(yX__〜7)を、高純度不活性ガス(N_2およびAr)中で温度を上昇させながら還元する方法を考案した。この還元反応を熱重量天秤中で行うことにより、yの値も正確にinsituで得ることができる。この方法は、いままで得られていた試料に比して、酸素空格子点の規則度が高く、電子線回析、核磁気共鳴などで、非常に興味ある成果が得られた。 (2)YBCOにおいて、CuをFe、Coなどで置換した系の物性 Cuを3d遷移金属Fe、Coなどで置換した研究は、数多くなされているが、我々は、置換したFeの分布(いわゆるCu_IとCU_I、およびCu_I面での分布ないしは、配列)を変えるために、一たん合成した試料を還元雰囲気(高純度不活性ガス中で800℃位で加熱)に置き、次いでFeの拡散が起こらないであろう温度400℃で充分酸素を与えて試料を得た。この方法は、上記の分布を、普通の熱処理に比較すると大きく変え、手衡状態のみならず物性も大いに変わる事が明らかとなった。特にMassbower効果の研究は、多くの情報を与え、磁性と超伝導の関係を詳細に議論した。
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