研究課題/領域番号 |
63631518
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
竹田 和義 九州大学, 工学部, 助教授 (10029548)
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研究分担者 |
井戸垣 俊弘 九州大学, 工学部, 助手 (40038013)
瓜生 典清 九州大学, 工学部, 教授 (60037702)
出口 博之 九州大学, 工学部, 助手 (30192206)
山内 淳 京都大学, 教養部, 助教授 (10027071)
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キーワード | 共鳴原子価結合 / 有機ラジカル結晶 / 圧力効果 / 低次元量子スピン系 |
研究概要 |
高温超伝導の発現機構をめぐって多様な研究が発表されている。我々はホールを含むCuO_2面内の量子スピン系の反強磁性基底一重項の共鳴状態、いわゆる共鳴原子価結合(RVB)状態からの励起が基本になっているという立場から研究をめざした。3d電子系に比べ有機ラジカル結晶中に求めるのが最初の目標であった。二次元格子上のRVB状態を、有機ラジカルは磁性を担う不対電子がO、N、C等のp-軌道にあり、軌道角運動量の消滅が完全で、g-値は電子の2.0023に近い値を示し、等方的量子スピン系をなし磁気状態に落ち込み難い。今年度は主に、良い低次元有機ラジカル結晶でRVB状態を具現する物質の探索から開始した。用いた試料は不対電子局在形ラジカルTANOL及び非局在型トリフェニルフェルダジル(TPV)である。TANOLについては磁場中帯磁率、6kbarまでの加圧下極低温の比熱測定を行った。常圧下でこの系は擬一次元ハイゼンベルグ型反強磁性モデルで極めて良く近似できる。:J/kb=-5K、1J'1=10^<-2>1J1、Tn=0.5K。低温では一次元RVB状態にあるといえる。これに6kbarまでの静水圧をかけたが、磁気状態のままで、他の相への変化は認められなかった。しかし磁気的性質はこの圧力領域で充分なパラメーター制御ができる程やわらかいことがわかった。10kbarまでの圧力領域もあれば、上記のパラメーターは約100%も変化させ得る。一方TPVについても比熱・帯磁率の測定から、この系が擬二次元量子スピン系であるという見通しを得た。この系の特徴のひとつは、不対電子が大きい有機ラジカル分子内で非局在している所にあるが、この性質は相転移の発散の鋭さを鈍らせる(比熱のTn=1.7Kのピークを丸くする)効果をすると思われる。V/t【similar or equal】6〜8とした一次元ハバード系の理論の比熱に合うが、帯磁率は合わず、むしろ二次元的である。今後はこれらの系の加圧下実験及びholeを導入する手法の開拓が具体的目標である。
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