研究概要 |
本研究は、シランSiH4およびメタンCH4プラズマ中での発光ならびに非発光ラジカル種の生成素過程を量子化学的計算によって明らかにすることによって、ラジカル活性種の起源となる分子の電子状態を決定し、特定ラジカルの選択的生成のための基礎的データを得ると共に、生成した活性ラジカル種とシリコンおよびダイヤモンド固体表面との相互作用ならびにその結果生ずる表面反応のメカニズムを量子化学的方法によって明らかにしようとするものである。 今年度は、『ラジカル活性種の生成素過程とその起源となる電子状態の決定』のために、ab initio分子軌道法計算により、シランプラズマから生成するSiH2ラジカルとSi原子の発光種・非発光種の生成素過程およびその起源となるSiH4の電子状態を明らかにする研究を行った。具体的には、(1)SiH4分子からSiH2ラジカルを生成する機構、(2)SiH4分子からSiH2を経てSi原子を生成する二段階機構と、一段階でSi原子を生成する機構の2つの反応経路について、反応のポテンシャルエネルギー超曲面を、電子的基底状態を含めて、エネルギーの低い順に10ヶの電子状態について計算した。ab initio分子軌道法計算のbasis setには、3-21G+(4s,4p Rydberg AO)+(3d AO)を用いた。その結果、SiH2ラジカルはSiH4のいくつかの励起一重項状態(1'T2、1'E、2'T2)から自発的に生成されること、一方、Si原子の発光種(^1P^0)はSiH2ラジカルを経る二段階機構では生成せず、SiH4の第五励起一重項状態(1'T1)から一段階機構で自発的に生成することがわかった。以上、シランプラズマについて電子状態制御による反応性プラズマの制御を行う上での重要な基礎データを得ることができ、今年度計画はほぼ達成された。 来年度は、メタンプラズマについて、量子化学的方法を適用した研究を行う予定である。特に、ダイヤモンド(100)表面の単原子層エピタキシャル成長の素過程を明らかにし、低圧下におけるプラズマによるダイヤモンド生成のメカニズムの解明を進めたいと考えている。
|