屈折率の大きな媒質中を進む光が屈折率の低い媒質との境界に達し、かつその境界面とのなす角が臨界角より大きいときは全反射する。このときその光の一部は低屈折率媒質の中に「しみ出し」、そのしみ出し長さは波長程度で、エヴァネセント光と呼ばれる。光学的に研磨された上面窓を持ち、1mm×3mmのチャネルを持つ放電管を作成し、ネオン-ヘリウム混合気体をつめて直流放電を行った。上面窓に42゜の頂角を持つプリズムを置いて、窓面と光学密着させ、CW色素レーザーからのレーザー光を、このプリズムを通じて窓に入射させた。このレーザー光は窓板の上下面で全反射し、放電プラズマの接する面にエヴァネセント光を生じた。レーザー波長を594.5nm(ネオン1S_5-2P_4)の準安定準位からの吸収線に同調し、この光による吸収の効果をオプトガルヴァノ法で検出した。消し切れなかったレーザー光の散乱光の効果を差引くために、587.6nm(ヘリウム2^3P-3^3D)に対するオプトガルヴァノ信号を同時に測定した。そして、プリズムの代わりにスリガラス板を置いて散乱光のみを作り、上と同様の測定を行って、第1の実験での594.5nmオプトガルヴァノ信号から散乱光の効果を引き去った。その結果、期待どうりの、エヴァネセント光が管壁近くの準安定原子に及ぼした効果が検出できた。 つぎは、レーザー発振波長を吸収線プロファイルについて走査して、固体壁極近くに存在して、固体表面と相互作用しつつある励起原子についての情報を得ることを試みたい。
|