本研究では、未知の状態機械の構造を推定するという問題に対し、人間がとう対処するかを仔細に観察する分析的方法と、この問題を解くことのできる人工知能プラグラムを作る合成的方法とを併用している。 分析的方法については、既に、実験とその結果の解析が行われている。63年度は、その結果を参考にして、主に、合成的方法を以下のように進めた。 自動的に生成される未知の状態機械推定問題に対して、解答を与えられるようなプログラムをワーク・ステーション上で、LISPを用いて作成した。この推定問題の解法はいくつもあり、したがって、それを解くプログラムをいくつも作成することができる。ある1つの解法が、状態機械を理解する1つのメンタル・モデルに対応するとも言える。 例えば、単純に、状態遷移に対応する人力値を憶えていくモデルや、状態機械の特徴的なパターンを手がかりとして理解するモデルや、以前に理解した状態機械を憶えておき、それを参照して、推定しながら理解するモデルなどを作成した。 その結果、[1]状態機械の状態数や、入力値の個数が増加することによって、どの程度状態機械の理解の難易度が大きくなるか、[2]状態機械の特徴的なパターンに着目して理解することによって、どの程度記憶のチャンク数が少なくて済むか、[3]以前に理解した状態機械に基づく推定の効果、[4]忘却のパフォーマンスへの影響などが、定量的に明らかにされた。 また、応用の一例として、市販されているいくつかのエディタ・ソフトのコマンド構造を状態機械に置き換え、構成したモデルを用いて、エディタ・ソフトの使用容易性の評価を試みた。
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