本年度は、知識ベースの無矛盾性維持の基礎理講となる「否定」の扱いに関して、意味論的及び手続き論的観点から以下の研究を行った。 1.否定に関する意味論的考察 否定情報を含む論理プログラムは、一般論理プログラムと呼ばれるが、その意味論は、未だ不完全な部分が多い。しかし、最近の研究成果としてプログラムの各述語に呼び出し関係から導ける順位付けを行い、その順位付けが一定の条件を満たす層状プログラムという概念が提案されている。この条件とは、否定の述語の定義がその述語以外の述語によって定義されなければならないことを要請するものである。このような制限を付けた層状プログラムでは、完全モデルと呼ばれる意味論が有力であり、しかも、完全モデル意味論は、従来の極小限度と密接に関係していることが明らかにされている。我々は、層状プログラムにおいて否定で用いられている述語を、正の述語のみによって定義できることを示し、否定の意味論を明らかにした。 2.手続き的意味論 1.で述べた意味論に従って述語の否定を陽に定義するためには、述語の否定を別の正の述語のみで定義した形に変換しなければならない。我々は、このような変換が可能な論理プログラムの性質を明らかにした。すなわち、ある述語が展開、たたみ込みなどの等価性を維持するプログラム変換によって、本体部のみに現れる変数(内部変数と呼ばれる)を含まないプログラムに変換できればよい。つまり、このクラスのプログラムに対しては、述語の否定の定義を機械的に計算する方法がある。そして、内部変数のないプログラムに変換可能なプログラムの性質を明らかにし、同時にこの変換を自動的に行う方法を提案した。
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