研究課題
血栓性素因における血小板の役割、意義を血小板膜とくに受容体の構造と機能に焦点をあわせ研究を行なっている。GPIbはトロンビン、von Willebrand因子(vWF)の結合部位であるが、山崎はGPIbアミノ酸配列をもとに10種以上のペプチドを合成し、血小板トロンビン凝集、vWFによる凝集に対する抑制効果、GPIbに対するモノクロ-ナル抗体結合の抑制効果より、機能ドメインの場所を想定した。またGPIIb/IIIaに対するモノクロ-ナル抗体を作成し、凝集におけるGPIIIaの意義を明らかにした。GPIIb/IIIaは血小板無力症で欠けていることが知られているが、加藤らは本症例の遺伝子解析を行ない、患者の異常遺伝子は点突然変異あるいは小さな欠失ないしは挿入により異常を来していることを明らかにした。かかるGPの血小板での発現を諸井は培養巨核球様細胞を用いて解析し、GPIIbは前駆体の形で存在するが、GPIIIaは成熟形GPIIaと同期して発現し、前駆体は見出されなかった。GPIbの発現量はGPIIbに比し少なく、養巨核球様細胞ではIbの糖付加反応などの細胞内プロセッシングが完全には行なわれていないことが示唆された。コラゲン受容体については議論が多い。斉藤は血小板抽出物の中にコラゲンに結合する蛋白を精製し、N末端より約20残基のアミノ酸配列を決定すると、vWFのポリペプチドとよばれる部分の一部と完全に一致した。本蛋白はコラゲンによる凝集を濃度依存的に抑制し、コラゲンによる血小板活性化時、血小板自身が本蛋白を放出して凝集を抑制する機構があることを推定した。またコラゲン凝集を欠く患者血小板に諸井はGPVIの欠損をみており、コラゲン受容体の本体はなお複雑である。大熊は血小板トロンボキサンA_2受容体を精製し、このmRNAを発現している細胞株を同定し受容体の部分アミノ酸配列を決定した。本受容体異常症例も見出している。木幡はヒト白血球接着分子の全糖鎖構造を決定し、その構造の特性を明らかにした。
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