アナナスショウジョウバエの複眼形態突然変異Omは、レトロトランスポゾンの一種(tom)の挿入によるものでゲノム中22の座位にマップされる。本研究では形態的に特徴のある5つの座位のOm突然変異を選び発生過程を追って組織学的に組織学的に調査し、形態異常の発現時期をしらべた。その結果、すべてのOmで3令幼虫中期に形態形成溝の下および後方で細胞死がはじまり、その後死細胞の範囲が拡大し、各突然変異に特有なものになることがわかった。組織の連続切片をもちいた画像解析の結果死細胞の領域は、成虫の複眼における個眼の欠除部位に相当することが明らかになった。 Om遺伝子の情報発現時期をしらべるため、Om(2D)および野生型から発生段階を追ってRNAを抽出し、Om(2D)DNAの一部をプローブとしてブロッティングをおこなった。その結果Om(2D)遺伝子の産物は、野生型では胚には存在せず、幼虫から成体に至る間に次第にその量の増加がみとめられた。これに対しOm(2D)では胚において最も強い発現があり次第に減少するが、成体に至るまで或る程度発現していることが明らかになった。今後この産物の組織内分布を調査しその働きを明らかにすることをめざす。 Om突然変異の表現を抑圧する遺伝子Somのクローニングについては、まだ成功していない。Somもtom挿入突然変異と考えられるので、tomをプローブとしてスクリーニングをおこなっているが、Somの領域と思われるDNAはまだ得られない。
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