本年度は、1.ホヤのホメオボックス遺伝子の単離と、2.ホヤ胚におけるinsituハイブリダイゼーション、イムノスティニング法の検討の2点を計画し、以下の結果を得た。1.サザンブロットの結果に基づいて作成したマボヤのサブゲノムライブラリーより、カイコのホメオボックス(以下Hbx)をプローブとして約2.7kbのDNA断片をクローン化した。このクローンはHbxの45ー60番目のアミノ酸残基に対応する配列を持っていた。45番目のコドンの5'側にはイントロンーエクソン境界のコンセンサス配列が認められ、HbxがDNA結合ドメインの中で分断されていることが示唆された。このDNA断片をプローブとしてマボヤ成体の生殖腺から調製したpolyA^+RNAについてノザンブロットを行なったところ、この遺伝子から約2.8KbのRNAが転写されていることが判明した、そこでCDNAクローニングを行ない、3個のクローンを単離し、内1個について塩基配列を決定しつつある。これまでにHbxがさらに9番目のコドン内で1ケ所、計2ケ所でイントロンにより分断されていること、転写開始点はクローン化したゲノムDNAの5'側、少くとも1.3Kb上流に存在することが判明した。一方マボヤのゲノムDNAのサザンブロット解析によれば単離したHbxと類似したHbxを持つ別の遺伝子の存在は否定的である。 2.シロポヤ胚で確立されたinsituハイブリダイゼーション法がマボヤ胚でも同様に働くことをミオシンmRNAをコントロールとして確認した。現在Hbx部分、3'非翻訳領域等をプローブとして、マボヤ生殖腺についてinsituハイブリダイゼーションを試みている。また塩基配列から予想されるアミノ酸配列に基づき合成したペプチドに対し抗体を作成した。現在マボヤ胚についてイムノスティニングを行なう準備をすすめている。次年度では胚での発現パタンを、ノザンブロット、insituハイブリダイゼーションにより明らかにしていく予定である。
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